発汗と赤面
人前で話すことが苦手だ。
仕事上、仕方なく人前で話す機会も多く与えられてきたが、そう簡単に慣れるものではなく、ふと気がついた時の体に流れる大量の汗。
脇や手の平、背中や胸、足の裏まで垂れるくらい。
何より嫌なのは赤面すること。
カーっと頬や耳たぶが熱く、赤くなっていくのを自覚するともう止められない。
「何かおかしなことを言ってしまったのか。」
「あれ、もしかして自分の発言で空気が変わったかも。」
ネガティブな思考が頭を巡り、話していたこともそこそこに発言を切り上げてしまう癖がある。
また、端から「上手く伝えられない」と頭で考えてしまうと、発言そのものを諦めてしまう。
講師として人前で話をする以上、そういったことは許されないので、いい加減な発言で茶を濁し、思考を段々とクリアにしていく。
それで6時間ほど講義を続けられるのだから大したものだ。我ながら。
「答えられないんですか。」
小学校2年の担任だった高田先生の言葉。
言われた言葉は曖昧になってきているが、クラスメイトたちがじぃっとこちらを見つめる中、問われた問題が分からず自席で立ちつくす自分。
次第にぼやけ、滲んでいく視界。
その後、どのように許され、席に座ることができたのかは記憶にない。
人前で話すことに加え、人と接することが苦手となるきっかけが高校生の時に訪れるのだが、この小学校2年の出来事が一つのきっかけとなったことは間違いない。
忘れることのできない悔しさともどかしさ、羞恥心。
高田先生のおかっぱのような髪型と真っ赤な口紅。